自由な生活、管理された生活。希望が生きる武器となる。
読書が好きで、読書メモがわりにブログ始めました。
多分、昔の本が多めになると思います。
遅読なので、更新も遅めですが、コツコツ書いていきます。
基本的にネタバレありですので、内容知りたくない方は読まない方が良いです。
安部公房「砂の女」
オススメポイント
この作品は、20数ヶ国語に翻訳された名作で、20世紀を代表する世界的作品です。
内容は、一流の文学作品ではありますが、ミステリー的要素もあり楽しめます。
男・砂の女・村人の行動理由が、話が進むにつれて明らかになっていく。
そして、男が、脱出が不可能と思われる砂の穴に挑む場面、そこから、抜け出し、村の中を、隠れながら逃げる場面など、読んでいて手に汗握る面白さがあります。
また、主人公が思考したている場面も多く、その考えの表現が独特で面白い、安部公房の比喩を楽しむのお勧めです。
あらすじ
解説
男は、砂の穴に来る前は砂の流動性に憧れ、人生のよりどこがあるという幻想を否定していた。平凡な日常を受け入れ、人間性まで平凡になっている人間への反発を持っていた。また、奥さんとの関係も、上手くいかず不満を持っていた。
砂の女は、自由のない環境を受け入れて、その奴隷的な生活ありがたがく思っている考えなくても、仕事が与えられ、そこに入れば食うのには困らない。
ここで2つの生き方の対立が見られる、自由な生活、自分で判断する自由、その責任は自分で背負う。(砂的生き方)管理された生活、自分で考えないで、保護され、生活を保障される(定着的生き方)
また、自分の帰属について、片道切符と往復切符のがあり、片道切符とは[繋がりのない毎日、明日どうなるともわからない暮らし]往復切符とは[昨日の続きが明日も続く、安心して休むことができる暮らし]
男は、往復切符(繋がりのある安定した生活)を持っていたから砂的生活に憧れていた女は、片道切符(明日は、どうなるかわからない、その日の作業に必死)しか知らないため、定着的生活を求める
男は逃げることに失敗して、女に語る「向こうの生活が羨ましく見えるこのまま暮らしていて、どうなっていくのだろうと思うことがたまらないでも、どっちの生活でも、そんなことはわかりっこない気を紛らわせてくれるのものが、多い方が、なんとなくいいような気がする」
また、男は人間の恐る孤独について、幻を求めて満たされない、渇きのことと理解し繰り返される日課が、ささやかな充足感を与え、幻を求めることを和らげることを実感するこれは、男が、平凡な日常の繰返しも馬鹿にできないことを感じる。
そして、その繰り返しの日々の中に、鳥の罠の装置「希望」を作る。それが、文字どおり男の希望になり、過酷な砂の生活を激変させる
男は、希望を得ることにより、他人から支配されない武器を得た。その武器によって、この世界の捉え方が変わり、前向きに生きることができる希望があれば、どんな生活でも絶えることができる。穴の中にいても、穴の外から穴を眺めている感覚になる逆に言えば、希望のない生活は、どんな場所にいても、耐えられないということだろう
男は、希望によって、往復切符を手にいれた。